ワールドツアーレースの集団の中で最もエアロダイナミクスに優れたロードバイクを目指して設計され、最先端のテクノロジーを搭載した新しいエアロロードバイク「Y1Rs」のホワイトペーパーを公開します。

開発段階のさまざまな検証結果や、コルナゴが開発した新しい技術、それを用いて独特なフレーム形状に至るまでの過程が詳細にわかる資料です。

現代のロードバイクがいかにして誕生するのかも分かる、非常に貴重な資料です。ぜひご覧ください。

Built To Defy Wind – 気流に挑む – 

Y1Rsは、スピードが重視されるレースにおいて究極のロードバイクとして誕生しました。キーワードは、気流の最適化とスピード性能を高める「究極の空力性能」とゴール前スプリントを制する「圧倒的な剛性」です。

レースのために − From Race to Race −

Y1Rs はレースのためのロードバイクです。そのため、V4Rs の開発と同じく、ワールドツアーチームのプロ選手たちと共に開発しました。

開発目標の重点は明白でした。エアロダイナミクスとコントロール性能を新しいレベルに引き上げること。そして軽量化です。

コルナゴは、この目標を4つの重点項目として設定しました。

  • エアロダイナミクス
  • 剛性の最適化
  • 新しいUCI規則に則った極限の効率性
  • サイズとジオメトリ設計

そして、Y1Rs は V4Rs で定められた厳格な検証手順に則って設計されています。検証手順は以下の通りです。

  • コンセプトと基礎設計
  • プロトタイプの開発
  • 社内テストと複数のプロトタイプ検証
  • 完璧なロードバイクへ仕上げる最終確認

1.エアロダイナミクス

Y1Rs の設計プロセスは、テストデータに基づいて行われています。

Y1Rs の設計段階では、CFD(数値流体力学)シミュレーションと、実験的な風洞試験が無数に行われました。特に前面領域に重点が置かれ検証されました。この試験はハリーファ大学(アラブ首長国連邦アブダビ)とミラノ工科大学(イタリア)とのパートナーシップによって実現が可能となりました。

ミラノ工科大学とハリーファ大学の2つの大学研究機関と協力して実現した、比類のない精度の空気力学解析モデル

今日の自転車業界において「空気力学設計」は次のように検証されます。

  • CFD シミュレーションを実行して、最も有望な設計を選択する。
  • 設計の最終段階で再度シミュレーションを行い、目標が達成されたかを検証する。

CFDシミュレーションは、ロードバイク開発においてエアロダイナミクスを詳細に分析するために最も優れたツールです。ただし、シミュレーションを行うために走行条件を極端に単純化する必要があり、精度に欠ける部分があります。そのため、コルナゴはパートナー大学の協力を得て、従来の手法を大幅にブラッシュアップしました。それによって、第1段階である「コンセプトと基礎設計」フェーズの初めから、シミュレーションと実証実験が同時に行えるようになったのです。

また、実験には3Dプリント技術も用いました。アイディアをすぐにプロトタイプへと反映することができるので、細かなフェーズにおいても設計とシミュレーション結果の検証が可能となりました。その結果、シミュレーションは仮想条件ではなく、より現実に近い正確な解析モデルを構築することができました。

予備設計における2つの異なるダウンチューブソリューションを選択するための実験テストとシミュレーションの例

<検証結果の注意点>
水平軸の「Yaw(ヨー)」は翼の入射角です。たとえば、ヨーが 0° の場合、風は自転車の速度と完全に同じ方向を向いており、90° の場合は完全に横風です。科学的な文献によると最も一般的な走行条件は 0° から 12.5° ですが、強い横風があるため、より大きなヨーは一般的には使われません。

COLNAGO CFDモデルの構築

抗力(ドラグ)は、ロードバイクの相対的な動きとは反対に作用する力です。抗力は2つの力の組み合わせによって導かれます。

・圧力抗力
抗力の主要要因です。ロードバイクとライダーの前部と後部の圧力差によって生じます。前部の圧力が高く、後部の圧力が低い場合、ライダーがこの圧力差を埋めるために大きな力が必要となり「吸引効果」が発生します。例えば、空気の流れから物体が離れると、突然圧力差が発生し、抗力が発生します。

・摩擦抗力
流体と個体の外部表面間の摩擦が原因です。ロードバイクにおいては、速度が比較的遅く、空気の粘性が低いため、通常、影響力は圧力効力よりも小さくなります。

コルナゴはフレームの70箇所に穴を開け、センサーを挿入して自転車の各エリアの空気圧を計測しました。

現在のロードバイクは空力性能が極めて高く設計されていますので、性能レベルをさらに押し上げるためには、分析ツールをさらに改善し、フレームと接する薄い空気層で何が起こっているかを詳細に理解する必要があります。空気の流れが分離すると抵抗が発生します。この薄い空気層は境界層*と呼ばれ、分析精度が上がるほど計算時間は長くなります。そのため、標準的なCFDモデルのほとんどでは、境界層は簡素化されています。しかし、コルナゴでは境界層を正確に分析するためにロードバイクに圧力マッピングを施し、フレームと接する気流を計測し、より正確なCFDモデルを構築しました。

圧力マッピングでは、フレームやコンポーネントの特定ポイントにセンサーを設置します。その数は、1台あたり平均70ポイントに及びます。このために3Dプリント技術が大いに役立ちました。

主な計測ポイントはロードバイクに発生する抗力の影響が大きく、ライダーによる影響を受けない前部領域でした。センサーはフォーク、コクピットのヘッドチューブ、ダウンチューブといったさまざまな位置に配置されシミュレートされた付着流と分離流の両方で点圧の絶対値を調査し、さまざまな風の状態(流速とヨー角)での流れの分離点を特定しました。

*境界層
表面に沿って流れる流体によって形成される、体表面のすぐ近くの薄い流体層。その厚さはさまざまな要因(流体の種類、速度、対象の形状)に依存し、ロードバイクの分析では通常数ミリメートルの厚さです。

空気力学研究で使用される標準的な方法よりも、倍以上に正確なコルナゴのCFDモデル

風洞実験により膨大な量のデータが収集されると、そこから最も困難で、設計に関わる重要なプロセスへと移ります。実験結果(メッシュ分析、乱流モデル、境界条件、気流とフレームの特性など)に合わせてCFDモデルの微調整を行います。特に以下の2点が重要視されました。

・正確な圧力での分析とCFDモデルとメッシュの調整
・流れの剥離と乱流特性の正確な位置特定

<抗力面積実験の精度>

一般的な計測方法コルナゴシミュレーション
基準値平均誤差30%平均誤差15%
フォークアームの実験値とCFDモデルによる推定値との偏差の例。コルナゴシミュレーションの平均誤差は15%ですが、標準モデルでは約30%です。

チューブ プロファイルと位置および前面面積の最適化:各プロファイルは、WAD 加重値に従って、正面風と最も頻繁な横風の両方の条件で最適化されています。

チューブ位置の最適化:チューブの位置は、剛性と重量(例:DT曲率とホイールからの距離)を損なうことなく、最高の空力特性を実現するために最適化されています。

<検証結果の注意点>
WAD抗力(加重平均抗力)は、さまざまなヨーでの抗力を考慮し、各条件で発生する確率で重み付けします(低角度の場合は重みが重く、高角度の場合は重みが軽くなります)。これによって、さまざまな条件下での平均値を取ることができます。つまり、実際の翼とトラックの特徴に応じて、各レースでの平均値は上下する可能性がありますが、それでも横風に対する自転車の挙動を数値化する際には、最も一般的に用いられる手法です。

前面面積を大幅にスリム化

Y1Rs の前面面積は、コルナゴの革新的なデュアルプレート構造により、全体的な剛性を損なうことなくヘッドチューブ面積を 19% 削減しました。これはエアロロードバイクカテゴリで、最小レベルです。

*ライダー自身の手やブレーキレバーは含まれません。

WYND© シェイプを採用した、まったく新しい一体型コックピット CC.Y1

Y1Rs のために開発された CC.Y1 は、これまでにコルナゴが開発したドロップハンドルの中で最もエアロダイナミクスに優れます。

<主な特徴>

  • エアロダイナミクス効率を最大化する形状
  • 中央領域で気流分離が起こらないように最適化されたV字シェイプ(CC.01との比較)
  • UCI規則に則り完全に一体化されたハンドルバーとスペーサー

垂直剛性と水平剛性を損なうことなく空力性能を実現し、剛性が16%向上

Y1Rs はハイスピードで走るスプリンター向けに設計されているため、タイムトライアルバイクのような極端なハンドルバーは使用できません。それでも空力性能を高めるために、いくつかのカーボンレイアップとプロトタイプ形状をテストしました。その結果、CC.Y1は一般的に販売されるハンドルバーよりも垂直剛性と水平剛性において16%剛性が高くなっています。

<検証されたプロトタイプ形状(一例)>

フード幅-ドロップ幅377-400377-400377-400377-400377-400397-420397-420397-420397-420397-420
ステム長9510511512513595105115125135

フレーム一体型ボトルケージ

空気力学的にみて一般的なドリンクボトルは最適ではありません。しかし、レースでもトレーニングでも、最も実用的で軽量な選択肢です。そのためコルナゴは、フレームの形状に完全に一致するカスタムボトルケージを設計し、ボトルによる空気力学的損失を最小限に抑えました。ダウンチューブ ボトルケージは、ダウンチューブ内の Di2 バッテリーのサポートも備えており、取り付けとメンテナンスが容易です。

シートポストジョイント – DEFY© シェイプ

UCI規則の緩和により、より自由な設計が可能となったエリアです。

シートポスト、シートチューブ、シートステーは、2つのY字形が重なった特徴的な形状となりました。シートポストはシートチューブに対して位置がずれており、シートチューブの傾斜角度も異なります。シートチューブはより優れたエアロダイナミクスを追求するため、後輪に追従するような形状になりました。
一方、シートポストは通常​​よりも傾斜しているため、垂直方向の追従性を生み出し、ロードバイク全体の剛性を維持しながら、乗り心地が良くなりました。その結果、長距離や長時間のトレーニングでも快適に走行できます。

テストと最終結果

ワールドツアーチームにとって最も重要なのは、ロードバイクが以前のモデルやライバルに比べてどれだけ速いかということです。

完成したロードバイクの風洞実験で信頼性の高いデータセットを得ることは簡単ではありません。ですが、コルナゴが独自に設定したテストモデルによってより精度の高いテストが可能となりました。

まずテストに用いるために、等身大のライダーマネキンが3Dプリントによって作り出されました。ライダーの抗力への影響は非常に大きいため、テストごとにライダーの位置がわずかでも変化するとデータの信頼性が下がります。そのために、常に同じ位置に設置できるライダーのマネキンが作られ、正確なデータの取得が可能となりました。

無風状態では、Y1Rs のエアロダイナミクスは他のトップレベルのロードバイクと比べてもごく僅かな差かもしれません。しかし、わずかでも風が吹き始めると、Y1Rs は空力効率において市場で最も高い性能を示します。

<抗力エリアの比較:バイク単体のみとレース環境を再現したマネキン使用の2パターン>

時速50キロで走行するために必要な出力(yaws 0°÷15°)

モデルPower 0° [W]WAD [W]
Y1Rs103117
V4Rs123145
BEST COMPETITOR106126

時速50キロで走行するために必要な出力(yaws 0°÷10°)

モデルPower 0° [W]WAD [W]
Y1Rs395474
V4Rs415499
BEST COMPETITOR396482
MODELRS-SP(sprint position)RS-ST(seated position)
V4Rs基準値基準値
Y1Rs硬さが3.5%上昇同等

<検証結果の注意点>
テストは、車体に2つのボトルケージと1つのボトルをセットした状態で行っています。

· 水平軸の「Yaw(ヨー)」は翼の入射角です。たとえば、ヨーが 0° の場合、風は自転車の速度と完全に同じ方向を向いており、90° の場合は完全に横風です。科学的な文献によると最も一般的な走行条件は 0° から 12.5° ですが、強い横風があるため、より大きなヨーは一般的には使われません。

· WAD抗力(加重平均抗力)は、さまざまなヨーでの抗力を考慮し、各条件で発生する確率で重み付けします(低角度の場合は重みが重く、高角度の場合は重みが軽くなります)。これによって、さまざまな条件下での平均値を取ることができます。つまり、実際の翼とトラックの特徴に応じて、各レースでの平均値は上下する可能性がありますが、それでも横風に対する自転車の挙動を数値化する際には、最も一般的に用いられる手法です。
 
結果は、測定のばらつきを軽減するため、各セットアップで3回分のデータ取得の平均値です。

バイク単体のみの検証はロードバイクの基本的な性能を確認する上で、より正確ですが、実際には常にライダーとの相互作用があり、ライダーが抗力の大部分を担っているため、レースで何が起きているかを表すものではありません。コルナゴにとっては、両方のセットアップで結果が一貫していることが非常に重要でした。

レースを想定したセットアップの結果では、Y1Rs で時速 50 kmを出すのに必要な力は、V4Rs よりも20W少なくなりました。

2.剛性の最適化

ワールドツアーレースに参加するスプリンターは、空力と剛性という2つの主要要素を重視します。コルナゴでは、実際のライディング時に何が起こっているかをシミュレートするために、複数の負荷条件下において複数ポイントでフレームの変形を測定するための新しいテスト設定と方法論を開発しました。その結果を1つの数値にまとめ、ロードバイクの剛性指標としてリアルライディング剛性としました。

V4Rsと同じ方法論を用いて剛性を高め、Y1Rs の最大目標である最終スプリントでの反応性を最大化しました。

MODELRRS-SP(sprint position)RRS-ST(climbing position)
V4Rs基準値基準値
Y1Rs3.5%上昇同等

RRSスプリントは、リアトライアングル、ボトムブラケット(平面外*)、フォーク(平面内*)、ハンドルバー(垂直および横方向)のそれぞれの剛性の組み合わせです。負荷は、平均体重75kgのライダーによる1500Wのスプリントをシミュレートするよう設定されています。

RRSクライミングは、ボトムブラケット(平面内*)、フォーク(平面内*)、ハンドルバー(垂直)、シートポスト(平面内*)のそれぞれの剛性の組み合わせです。負荷は、平均体重60kgのライダーによる390Wで座った状態でのクライミングをシミュレートするよう設定されています。

*平面外:力が縦方向の平面に対して角度をつけた面に適用されることを意味します。
*平面内:力が自転車の縦方向の平面と平行に適用されることを意味します。

スプリント

スプリントポジションでは、ライダーがペダルに力を加えると、ペダルへの負荷はバイクの中心線から外れます。さらに、腕でハンドルバーを引っ張ったり押したりすることにより、ロードバイクのフロント部分に多くの負荷がかかります。

シッティングポジション

ロードバイクに座った状態では、腕にかかる負担は軽く、リア三角にほとんどの重量がかかります。この荷重の偏りは急な上り坂で、さらに座ってロードバイクを漕ぐ場合にはさらに顕著になります。

3.新しいUCI規則に則った極限の効率性

Y1Rs の開発に正式着手した2021年には、UCIが新しい規則改訂を発表し、8:1チューブプロファイル*と新しいシートポスト位置の設計が可能となりました。それによって特徴的なY字型のシートポストジョイントが考案されました。

*チューブプロファイルの 8:1 比率は、各チューブの長さ8cmごとに、最小幅が1cmであることを意味します。

<新しいシートポスト形状の優位性>

1)シッティングでの地面への順応性が最も優れます。長い平坦ステージや逃げでは、エアロダイナミクスを最大化するために空力的なタックポジションをキープすることが重要です。Y字型のシートポストジョイントは、BBとリアハブの剛性に影響を与えることなく、従来よりも垂直方向の振動と衝撃吸収性が向上します。ライダーにとっては、パワーロスが少なく、タックポジションでの快適性が向上します。

2)気流に沿ったチューブ断面のため、チューブが風の方向に傾くほど、風に対する相対プロファイルが長くなります。プロファイルが長いほど、ペダリングの影響を受ける領域で気流が直線的になる可能性が高くなります。一方で、長さを大幅に増やすことで重量に影響を及ぼさずに実現する必要がありました。

4.サイズとジオメトリ設計

Y1Rs のジオメトリとサイズは、コルナゴがサポートする UAEチーム・エミレーツ および UAEチームADQ からのフィードバックをもとに設定されました。平坦路から起伏のある道まであらゆるコースで最高速度を目指すライダーのニーズに対応しています。

<V4Rsとの相違点>

  • HT と ST角度がわずかに急で前向きなため、タックポジション(クラウチングポジション)に対応し、空力とパワー伝達性を最適化。
  • リーチ/スタック比が増加(リーチ/スタック プロットで曲線が右に移動)し、よりアグレッシブで前傾姿勢をより深く取るポジションに対応。
  • サイズごとにカスタムフォークを採用し、サイズによって最適なトレイルを維持します。ハンドリングに密接に関わるトレイルは、Y1Rsでは純粋なレース向けに設計されています。直感的なハンドリングとステアリング アクションの応答性が、このモデルのキーワードです。

ジオメトリについて詳しくは、Y1Rsプロダクトページ をご覧ください。

2種類のシートポストオプション(0mmと15mmのセットバック)。タイヤクリアランスは最大32-622

<重量>

MODEL未塗装フレーム [g]フォーク重量フレームキット重量
Y1Rs9654501415
V4Rs7983751173

*フレームキット重量は、フレームとフォークの重量の合計です。

登坂時の剛性

Y1Rs は速度を最も重視したプロや熟練ライダー向けの究極のエアロロードバイクです。アグレッシブなポジションと高速走行が得意なライダーにとって、Y1Rsはそのニーズに応え、パフォーマンスを次のレベルに押し上げる究極のマシンとなるでしょう。

そしてV4Rs は、これまでに実現した結果と勝利によって、オールラウンダー向けの完璧なロードバイクで、急な登りから集団スプリントまで、あらゆる状況でトップレベルのパフォーマンスを発揮できることを物語っています。

ワールドツアーチームとの協力によって誕生した、究極のエアロロードバイク Y1Rs の購入は、コルナゴ日本正規ディーラーへお問い合わせください。

UAE EMIRATES
UAE ADQ

■関連リンク
Y1Rs プロダクトページ
V4Rs プロダクトページ

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